2006年08月

2006年08月31日

あっという間の1ヶ月。

今日で8月も終わり。

色々なことに追われていつうちに1ヶ月はすぐ終わってしまう。夏休みも残すところあと1ヶ月弱だ。…なんてことはあまり書かないほうがいいのかなー。

9月は、毎日一つ一つ着実にやることをこなしていこうと思います。

地味過ぎる夏休み。

at 23:43|PermalinkComments(0)日々の戯れ言 

2006年08月30日

満足。

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周りの評判が良かったということもあって「時をかける少女」を観てきました。大分、現実逃避気味。

17歳の少女がタイムリープするという設定は原作と同じだが、その他はオリジナルストーリー。ちなみに原作の主人公(芳山和子)は今回は主人公(紺野真琴)の叔母という設定で登場している。

いかにも角川らしいメディアミックス戦略と関連賞品の山には辟易とするけど…映画は評判どおりかなり面白くいい出来でした。アニメならではの描写や表現を適度に使いながら、原作のモチーフをうまく現代を舞台に再現しているし、話のテンポも雰囲気も言うことなし。久々にアニメ映画の当たりを引いた感じだ。

この夏は「ゲド戦記」「ブレイブ・ストーリー」など、話題になったアニメ映画の出来はいまいち。もしこれからどれかを観ようと考えているなら、断然「時をかける少女」がおすすめです。

at 23:55|PermalinkComments(0)映画の話 

2006年08月29日

ついつい。

この1週間ほど家でやる作業が多く大学へ行っていない。ちょうど定期も切れたし。旅行でもないのに1週間大学へ行かないというのはかなり久しぶりの気がする。この2年ほどは図書館が閉まってる時も、他のキャンパスへ行ってたりしてたからなあ。

そんなわけでこの1週間は出歩くのも近所ばかり。

今日はちょっと野暮用で渋谷まで行き、ついついCD購入。といっても大して浪費はしてません。試聴してついついマキシシングルを1枚買っただけ。これ↓

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コーネリアスの新しいシングル(「MUSIC」)を1週間遅れで買ったのだ。本当はこれと一緒にデジタルリマスター&ボーナストラック付きで再発した、フリッパーズ・ギターのアルバムを3枚買いたかったんだけど、月末なので自重。

相変わらず邦楽ブームは続いているらしい。9月にはYUKIのアルバムやザ・クロマニヨンズ(甲本ヒロト&マーシーの新バンド)のデビューシングルが出るし、もう少しするとコーネリアスのアルバムが出る。買っちゃうよなー。ソウル・フラワー・ユニオンのベストも出るらしい。気になるな~。

洋楽はというと…この夏はレッチリとトム・ヨークのアルバムだけが収穫。

ギターを始めたい今日この頃。

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2006年08月28日

レポートに追われながら。

月末までに提出のレポートが1本あり、ここ数日はレポート執筆のために先行研究を色々と読み返している。そんな中で、一度読み始めるとついつい最後まで読んでしまう本もある。そのうちの1冊を紹介。

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中北浩爾『一九五五年体制の成立』(東京大学出版会)
 日本の戦後政治を特徴付けたものが一九五五年体制(以下、五五年体制、と略記)であることに異論は無いであろう。五五年体制という概念は、1964年に政治史学者の升味準之輔が雑誌論文で発表したものである。すなわち五五年体制とは、形式的には自民党と社会党による二大政党制、実質的には自民党の一党優位制を意味するものである(2頁)。五五年体制は、1993年の自民党の下野とその後の社会党の事実上の消滅によって崩壊するのであるが、今日に至るまで五五年体制という言葉は戦後政治を説明する際に広く用いられている。本書は、五五年体制の成立という戦後政治の最も重要な局面を正面から取り上げて分析している。
 資料の問題もあったのだろうが、これまで戦後を対象とした外交史と比べて政治史の数は限られていた。このような状況の中で、非常に重要な五五年体制の成立過程を政治史として明らかにしたということだけでも、研究上の意味は大きいものである。しかし、本書の評価はそこにとどまるものではないであろう。本書は政治史としてだけではなく、日本政治外交史の傑作である。本書は、朝鮮戦争の休戦とそれに続くインドシナ紛争の休戦に伴う国際的な緊張緩和と、日本にとって最も重要な二国間関係であった日米関係を踏まえ、それらと関連付けながら五十五年体制成立に至る国内政治を分析することによって、立体的な政治外交史となっている。
 本書が何よりも優れているのは、以上の評価からもその一端を伺うことができる分析視角の秀逸さであろう。ここでは具体的な内容に関する紹介は割愛し、分析視角(9~12頁)に絞って紹介することにしよう。本書は第一に、防衛政策とともに、外交政策と経済政策を分析し、それらをより重視している。防衛政策の観点からの分析に偏りがちであった従来の研究に対して、本書が外交政策と経済政策および、諸政策間の相互連関を重視するということである。第二に、政党政治に加えてその周囲にあってそれに影響を与えるファクター(国際関係、経済団体および労働団体)を分析対象としている。これは、五五年体制を単なる政党制としではなく、文字通り政治体制として意味づけることに繋がるものである。第三に、保革対立を冷戦に与する勢力と冷戦に抗する勢力の対立と評価し分析している。著者は、 前著『経済復興と戦後政治』では社会党を分析対象の主軸としていたが、それがこのような本書にもうまく生かされているといえるだろう。
 以上の三点を視角に五五年体制の成立過程を分析している本書の記述は当然ながら多岐に渡るものであり、読み手にも学際的な素養が試される。結果として、国際環境の変容、予算編成をめぐる攻防、労資関係、政党再編をめぐる動きなどが多層的に折り重なる「物語」になっているため読みやすさという点では欠けるところがある。また論理的な説明を行うためか、時系列が前後する箇所も散見される。もっとも、やや読みにくいという点は重層的な視角であるがゆえの仕方が無いといえるかもしれない。むしろ、複雑な構成にもかかわらず本書全体を通してはその問題意識が一貫していることを積極的に評価すべきだろう。
 以上、本書の概略を分析視角を中心に紹介してきた。現在の日本政治外交史の1つの到達点であるといえる本書に内在的な疑問を呈することは非常に難しい。そこで最後に本書から見えてくる研究の展望を記しておきたい。本書は五五年体制の成立過程を政治外交史の観点から明らかにしたものである。まず考えられるのは五五年体制のその後であろう。五五年体制の定着、変容、崩壊といった過程はそれぞれ戦後政治の中で重要な意味を持つものである。また本書で描き出された五五年体制を前提として、その後の日本外交はどのように展開していったのだろうか。アジア外交や安全保障政策を中心に進みつつある戦後外交史研究と、本書の関係はどのように位置づけられるのだろうか。

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2006年08月27日

夏の学校。

オーラル夏の学校(5日目)

今日はリサーチキャンパスではなく教養学部がある第1キャンパスで授業。第1キャンパスの方は、サークル活動などの拠点になっていることもあって、夏休み中でも結構学生が多い。中にはクレイジーな人がいるもので、屋上で「ハロー・オレンジ・サンシャイン」「くじら12号」を熱唱する子がいた。今日みたいなどんよりした雲の下でこの2曲はかなり合っていないと思う。

そんなくだらない話はともかく、この夏の学校も今日を含めて残すところあと2回。最終日は成果報告会なので、講義は今日が最後。

今日は「政治学から見たオーラル・ヒストリー」がテーマ。日本政治思想史が講師だったので、政治学の視点だけでなく思想史の視点からのコメントがあり面白かった。オーラル・ヒストリーを思想史の観点からどのように扱うのかということは、思想史のみならず歴史を研究するものにとっては非常に興味深い問題である。人間の記憶のあやふやさはオーラルの問題点として指摘されることが多い。しかし思想史の観点からすると、そのあやふやさや勘違いそのものも研究対象になるのだという。んー、これはなかなか面白い。

ちなみに政治学の観点から重要なのは、インタビュイーによる証言の違いの問題。これは通常は問題点として指摘されるのだが、逆に証言が異なることの意味を深く考えると組織の特徴が見えてくるかもしれないのだという。これは派閥対立の歴史である社会党を見る上ではとりわけ重要な指摘だ。

ひとまず、これから2週間かけて、この夏の学校の報告をまとめます。

at 21:32|PermalinkComments(0)日々の戯れ言 

2006年08月26日

ついつい見てしまう映画。

相変わらずやる事が多く、なかなかまとまった時間が取れないこの1週間。今日も同じく、細かい作業をしていたり、資料を読んだり、ちょっと授業のレポートに取り掛かるうちに1日終了。

そんな日でもついつい見てしまうのが、寅さん。

前にも紹介したことがあるが(前の記事…リンク)、NHKのBS2で「男はつらいよ」シリーズの全48作を放送している(NHKの特集ページ…リンク)。前半の24作品は放送が終わり、現在は後半の24作を毎週土曜に放送中。ちなみに今日は第28作「男はつらいよ 寅次郎紙風船」。

当分は毎週土曜に寅さんを見る生活が続きそうだ。

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2006年08月25日

一人タッチの会。

昨年の秋に映画館にゼミの男3人で「タッチ」を映画館に見に行き、「長澤まさみのプロモーション・ビデオだね」と酷評しつつ、実際はかなり楽しんでしまったというのがタッチの会。明日から公開の「ラフ」のプロモーションも兼ねてなのか「タッチ」が地上波初登場。

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…まあ見ちゃうでしょう。今回は「レガッタ」をパスしてこちらを見ました。どっちを選んでも、ちょっと自分が悲しいところ。

ちなみに「ラフ」は「タッチ」とは監督が違うらしいです。さていつ見に行こうかな。

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2006年08月24日

話題の本。

今日は本の紹介だけ。『国家の罠』以来の回顧録のベストセラーとなっている話題の本↓

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杉本信行『大地の咆哮』(PHP研究所)
 新聞各紙で相次いで書評が掲載されるなど話題になっている元上海総領事の回顧録。先週の朝日新聞にも書評が掲載されていた(リンク)。著者の杉本信行は、入省後に中国の研修を受けた、いわゆる「チャイナスクール」の外交官である。なかなか日中関係がうまく行かないこともあり、チャイナスクールに対する激しいバッシングが行われた時期があったが、本書からはそういった批判を吹き飛ばす著者の日中関係に関する想いが伝わってくる。
 本書は著者が病の床にある中で書き上げられたものである。本書はその内容で大きく2つに分けることが出来る。前半部分では語学研修時代から上海総領事時代までの外交官としての体験を回顧している。もちろん日中関係の機微に渡る事項は慎重に記述が避けられているのだが、文化大革命の末期に語学研修をし、さらにその後は日中平和友好条約交渉に関わり、また台湾での勤務も体験するなど、著者の外交官生活は非常に興味深いものであり、全体としては資料的な価値も大きいだろう。とりわけ台湾に関してはかなり踏み込んで記述が行われている印象がある。
 外交史研究者の立場から重要なのは前半部分なのだろうが、本書の中でより重要な一般的意味があるのは後半部分であろう。後半では著者の体験に基づいた中国観察が書かれている。本書の副題は「元上海総領事が見た中国」であるが、後半はまさにその副題どおりの内容である。本書の解説として、かつて著者の同僚であった岡本行夫が「この本は、日本政府の担当者が、中国の反応を気にせずに叙述した初めての試みでもある」と本書を評しているが、本書の中ではかなり辛辣に中国を批判的に捉えている部分もある。なぜか日本ではその中国観察は、中国に対する過大評価と過小評価の両極端に議論が収斂しがちである。本書はこのような議論とは大きく異なる。そしてその筆者の観察の根底にある想いは、よりよき日中関係のために、というものであろう。そんな筆者は、環境問題を中心にかなり劣悪な状態にある中国の姿を明らかにしながら、日本はそんな中国を地道に援助していく必要があると説く。そうやって中国を思いやりながらも、一方で台湾問題に関しては中国側の誤った認識を辛辣に批判している。
 ある書評で本書は、「全編を通して伝わってくるのは巨大な隣国との外交に体当たりで取り組んだ著者の熱情であり、経験に基づく知恵だ」、と評されている。まさにその通りの好著である。もっとも著者の議論を現在の日本国内の政治状況の中で取り扱おうとすれば、それはまた異論が出てくるかもしれない。例えば対中ODAの筆者に対する考えは現実の政治状況と一致するものではない。著者は本書の刊行後わずか1ヶ月あまりでこの世を去った。本書の提言をどう生かしていくかは、残された我々読者の仕事なのだろう。著者の冥福を祈る。

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2006年08月23日

ふと気付いたこと。

大学でゼミの後輩と話し、帰ってからふと思ったこと。

自分、この半年間で変わったな~。

んんん、なんで? こいつ自分探しか? となりそうだが、結構単純かつあまり面白くはないことである。ふつうの人には面白くない勉強のお話です。

後輩とは同じゼミで国際政治を学んでいたのに、気が付いたらお互いが今読んでいるものが全然違うのだ。1年前は授業も同じものを結構とっていたし、読む本も似たり寄ったりだった。といっても1年前の夏はひたすら政治家や官僚の回顧録を読んでいたので、それは後輩とは違うのだが、要は意識の問題である。今も回顧録は読んでるし…これはもうほとんど趣味の域に達してる気もする。

今自分が読んでいるのはひたすら戦後日本の政治外交関係、それも野党に関する資料である。先行研究も読んでいるのだが、基本的に量もそれほど多くないので、圧倒的に資料を読んでいる。

先行研究よりも資料を読んでいること、そして国際政治関係をあまり読んでいないことが大きな変化である。日本政治外交史を専攻している大学院生という感じがする。

資料ばかりを読んでいることは、むしろ当然のことである。先行研究だけ読んでいても歴史として新しい研究は出来ないからだ。本当ならこの夏は、野党の政策文書などではなく外交文書を読んでいるはずだったのだが…もうそれは仕方が無い。

問題は国際政治関係を読んでいないことだろう。もちろん、ちゃんとアンテナは張っているから、どんな本が新しく出たであるとか、それの斜め読み程度はしているから、話についていけないということはない。でも、この半年の間に日本外交史ではなく国際政治関係でじっくりと読み込んだ研究書は数えるばかりである。

う~ん、別に歴史学者になるつもりはないだけに、これは問題な状況だ。とりあえず野党研究をある程度まとめた上で、若干の軌道修正を図りたい。

書いていて気が付いたもう1つの問題は、野党ばかり読み過ぎている弊害について。40年以上政権が取れなかった政党の考えの非現実的な認識に頭が侵されてくるのだ。だから昨日読んだ岡本行夫『砂漠の戦争』のような本が新鮮に読めるのかもしれない。これはまた別の機会にちゃんと書こうと思う。

ちなみに野党を読んでいて悪くないこともある。それは新しい視点を得られるということだ。野党の資料を読み込んでみると、野党なりの論理があることも分かるし、野党から見た自民党政権や戦後外交といったものも見えてくる。この視点を理解することは政府や与党だけを見ている人とは違う視点を自分が得るということでもある。それにこういった野党の視点は、戦後日本政治の中に埋め込まれた1つの要素であり、政府や与党の制約要素であったのである。

というわけでこの夏はもう少し野党研究を頑張ります。で、早く政府の研究に戻ります。

何となく頭に浮かんだことをポンポン書いていたら、非常にまとまりの無い文章になってしまった。でも、こうやって少しずつ自分を振り返って軌道修正をしていくことは研究テーマだけにこもりがちな大学院生にとって大事なんだろう。もちろん研究テーマを深く調べ論文を書くことが第一の目的なのだが、視野が狭いとなかなか広がりがある面白いものを書くことは出来ないからだ。

…ということを思った夏の一日。

at 18:54|PermalinkComments(0)日々の戯れ言 

2006年08月22日

休憩中の読書。

パソコンとの格闘はとにかく目が疲れる。そんな状況での逃避行動が読書というのはかなり異常だと思うが、それは大学院生の性というものだろう。小説や古典ではなく何となく研究に繋がりそうなものを選んでいる。

今日作業の合間に読んだのは↓。2年前に単行本が出たときは軽く立ち読みをしたのだが、今回文庫化を機にしっかり読んだ。多分、資料的価値は無いのだろうが、一気に読ませる筆力がある回顧録は個人的にかなり好きだ。

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岡本行夫『砂漠の戦争』(文春文庫)
 砂漠の戦争=イラク戦争である。著者は、イラク戦争時には内閣総理大臣補佐官として、日本外交の最前線に立っていた。本書は著者のイラク戦争をめぐる回想録である。とはいえ、本書は現役を退いた政治家や官僚が昔話をする類の書ではない。本書(単行本版)が出版されたのは2004年7月であり、自衛隊はイラクに派遣されその様子が大きく報道されている時期であった。このような時期には公にすることに制約がかかることも多く、またその戦後復興も緒に就いたばかりであり、ゆったりと回想をする時期でもない。それではなぜ本書が書かれたのかといえば、それは本書が、著者の職務上のパートナーであり友人であった奥克彦(2003年11月に同僚と共にテロリストに銃撃され死去)への鎮魂の書でもあるからだ。
 このような背景を持つ本書は通常の意味で読みやすい本ではない。「あとがき」の言葉をそのまま借りれば「この本には、「語り部」として奥のことを書いた部分、僕(岡本:引用者注)自身の回顧話、さらにはイラク事情の説明が並存」しているのである(367頁)。結果として本書は、時系列に沿って話が進むわけでもないし、各章が整然と分かれているわけでもない。しかし、その行間からはこの仕事にかけた著者の思い、そして志し半ばで去った奥への思いがひしひしと伝わってくる。
 本書は非常に「誠実」な本であると感じた。イラク戦争及びその戦後復興という現在進行形の出来事を扱い、また小泉政権も存続している以上、本書に書かれたことは現実に起こったことのごく一部であろうことは容易に想像が出来る。例えば本書の中では、官邸の中枢でイラク戦争を巡って行われたであろう議論はほぼ出てこないし、政策決定過程の機微に触れることも伏せられている。
 こういったことが関係しているのかは分からないが、本書を読んで考えさせられたのは、直接取り上げている日本のイラク戦争及び戦後復興への協力ではなく、実務家の生き方についてである。政策決定過程が出てこない一方で、現場で活躍した奥や著者の仕事については本書は非常に詳細に触れている。イラク戦争及び戦後復興への日本の関わりについては、日本国内で多くの議論が展開されたことは記憶に新しい。しかし一部を除いて本書にそういった議論に関わる記述は無い。本書に出てくるのは、日本政府の決定した方針、そしてその枠内で精一杯の努力をしイラクの復興に思いを馳せる実務家の生き様である。自衛隊をめぐる法的な問題、憲法9条の持つ意味、国際安全保障のあり方、イラク戦争の正当性、こういった問題はもちろん重要である。しかしこういった議論だけでなく、それでは国際協力の現場、日本外交の現場に立つ実務家達がどのように考え、どのように行動してきたのかについて考えることも重要なのではないだろうか。
 蛇足であるが、本書の主人公の1人である奥克彦は本当に優秀な外交官であったようだ。それは本書からも伝わってくるが、他の本からもそれは伺える。手嶋龍一氏が『外交敗戦』(旧題『一九九一年 日本の敗北』)の中で、湾岸戦争時の数少ない日本外交の「勝利」として描いている出来事がある。ここでその詳細は紹介しないが『外交敗戦』では伏せられている匿名の外交官が、本書の記述(336頁)によれば奥克彦だというのである。

at 22:30|PermalinkComments(0)本の話