2011年08月17日
オーラル・ヒストリー
3ヶ月ぶりのブログ更新です。
詳しい近況はまたその内に書くことにして(と言いいながら書かないのがいつものパターンになっていますが…)、今日はツイッターでつぶやいたところ反響が大きかった研究関係の話を書いておこうと思います。
◇
政策研究大学院大学(GRIPS)の「C.O.E.オーラル・政策研究プロジェクト」(リンク)でかつて実施されたオーラル・ヒストリーの一部がオンライン上で閲覧出来るようになりました(リンク)。
◇
私が大学に入学した10年前までは、まだそれほど知られていなかったオーラル・ヒストリーですが、この10年の間に状況は大きく変わったと思います。政治関係のみならず様々な分野でオーラル・ヒストリーが試みられるようになり、商業出版される成果も増えてきました。もちろん「オーラル・ヒストリー」という言葉が紹介される前から日本には「聞き書き」の伝統がありましたし、様々な形で先人に対する聞き取りは行われてきました。聞き取り対象による違いは大きいと思いますが、10年前はまだ政治家や元官僚が自分達の経験を公にすることを前提に語ることはそれほど多くはありませんでした。こういった状況はこの10年で一変しました。依然として「大事なことは墓場まで持って行く」という文化が残っていないわけではありませんが、それでも多くの政治家や元官僚が口を開くようになっています。
こうした変化の牽引車となったのが、GRIPSの「C.O.E.オーラル・政策研究プロジェクト」です。
『聞き書 宮澤喜一回顧録』(岩波書店、2005年)、大河原良雄『オーラル・ヒストリー 日米関係』(ジャパン・タイムズ社、2005年)、宮崎勇『証言 戦後日本経済――政策形成の現場から』(岩波書店、2005年)など、既にこのプロジェクトの成果を基に商業出版された本もありましたし、基本的にプロジェクトの成果物はGRIPSの図書館で閲覧することが出来ました。また、全てではありませんが、東大や慶應などの大学にはかなりの数の成果物が所蔵されていました。
このように、これまでもプロジェクトの成果は研究者に利用されてきましたが、今回、一部の成果のWeb公開が行われたことによって、これまで以上に利用が進むことが期待されます。Web公開されているデータはPDFであり、OCR処理されているので文字検索をかけることも可能なので、関連するオーラルには既に目を通しているという研究者にとっても大きな意味があるのではないでしょうか。
オンライン上での閲覧は、上記リンク先の検索ページから行うことが出来ます。全てをチェックした訳では無いですが、ざっと見たところ外交・安全保障関係では以下の人達のオーラル・ヒストリーがWeb上で閲覧可能です(50音順:括弧内はかつての役職)。
※名前をクリックするとPDFが開く一つ前のページに飛びます。
・伊藤圭一(内閣国防会事務局長)
・上原信夫(沖縄民主同盟青年部長)
・扇一登(海軍大佐)
・小田村四郎(行政管理事務次官、拓殖大学総長)
・海原治(内閣国防会議事務局長)
・海部俊樹(内閣総理大臣)
・栗山尚一(駐米大使:①転換期の日米関係)
・栗山尚一(駐米大使:②湾岸戦争と日本外交)
・斎藤彰(アメリカ総局長)
・夏目晴雄(防衛事務次官)
・宝珠山昇(防衛施設庁長官)
・松野頼三(自民党衆議院議員)
・宮崎弘道(外務審議官、駐西ドイツ大使)
・吉野文六(外務審議官、駐西ドイツ大使)
・吉元政矩(沖縄県副知事)
この他にも政界、官界に広げればもっとWeb閲覧可能なオーラルがあると思います。
Web公開の可否は、おそらくインタビュイー次第なのでしょう。今後すぐに公開数が増えるということは無いと思いますが、聞き取り終了後10年といった区切りで増えることを期待したいところです。
◇
以上のようにWeb上で多数のオーラル・ヒストリーを閲覧出来るようになったことは喜ばしいことですが、他方でこれまで以上に安易なオーラル・ヒストリーの利用が増えるのでは無いかという危惧が無いわけではありません。これは、オーラル・ヒストリーを研究にどのように活かしていくかということに直結する問題でもあります。
さて、ここからオーラル・ヒストリーを研究に活かしていく上での課題と、「C.O.E.オーラル・政策研究プロジェクト」以外のオーラル・ヒストリー・プロジェクトについても紹介しようかなと思っていたのですが、ここまで書いて疲れてしまったので、ひとまずこんなところで。
詳しい近況はまたその内に書くことにして(と言いいながら書かないのがいつものパターンになっていますが…)、今日はツイッターでつぶやいたところ反響が大きかった研究関係の話を書いておこうと思います。
◇
政策研究大学院大学(GRIPS)の「C.O.E.オーラル・政策研究プロジェクト」(リンク)でかつて実施されたオーラル・ヒストリーの一部がオンライン上で閲覧出来るようになりました(リンク)。
◇
私が大学に入学した10年前までは、まだそれほど知られていなかったオーラル・ヒストリーですが、この10年の間に状況は大きく変わったと思います。政治関係のみならず様々な分野でオーラル・ヒストリーが試みられるようになり、商業出版される成果も増えてきました。もちろん「オーラル・ヒストリー」という言葉が紹介される前から日本には「聞き書き」の伝統がありましたし、様々な形で先人に対する聞き取りは行われてきました。聞き取り対象による違いは大きいと思いますが、10年前はまだ政治家や元官僚が自分達の経験を公にすることを前提に語ることはそれほど多くはありませんでした。こういった状況はこの10年で一変しました。依然として「大事なことは墓場まで持って行く」という文化が残っていないわけではありませんが、それでも多くの政治家や元官僚が口を開くようになっています。
こうした変化の牽引車となったのが、GRIPSの「C.O.E.オーラル・政策研究プロジェクト」です。
『聞き書 宮澤喜一回顧録』(岩波書店、2005年)、大河原良雄『オーラル・ヒストリー 日米関係』(ジャパン・タイムズ社、2005年)、宮崎勇『証言 戦後日本経済――政策形成の現場から』(岩波書店、2005年)など、既にこのプロジェクトの成果を基に商業出版された本もありましたし、基本的にプロジェクトの成果物はGRIPSの図書館で閲覧することが出来ました。また、全てではありませんが、東大や慶應などの大学にはかなりの数の成果物が所蔵されていました。
このように、これまでもプロジェクトの成果は研究者に利用されてきましたが、今回、一部の成果のWeb公開が行われたことによって、これまで以上に利用が進むことが期待されます。Web公開されているデータはPDFであり、OCR処理されているので文字検索をかけることも可能なので、関連するオーラルには既に目を通しているという研究者にとっても大きな意味があるのではないでしょうか。
オンライン上での閲覧は、上記リンク先の検索ページから行うことが出来ます。全てをチェックした訳では無いですが、ざっと見たところ外交・安全保障関係では以下の人達のオーラル・ヒストリーがWeb上で閲覧可能です(50音順:括弧内はかつての役職)。
※名前をクリックするとPDFが開く一つ前のページに飛びます。
・伊藤圭一(内閣国防会事務局長)
・上原信夫(沖縄民主同盟青年部長)
・扇一登(海軍大佐)
・小田村四郎(行政管理事務次官、拓殖大学総長)
・海原治(内閣国防会議事務局長)
・海部俊樹(内閣総理大臣)
・栗山尚一(駐米大使:①転換期の日米関係)
・栗山尚一(駐米大使:②湾岸戦争と日本外交)
・斎藤彰(アメリカ総局長)
・夏目晴雄(防衛事務次官)
・宝珠山昇(防衛施設庁長官)
・松野頼三(自民党衆議院議員)
・宮崎弘道(外務審議官、駐西ドイツ大使)
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この他にも政界、官界に広げればもっとWeb閲覧可能なオーラルがあると思います。
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さて、ここからオーラル・ヒストリーを研究に活かしていく上での課題と、「C.O.E.オーラル・政策研究プロジェクト」以外のオーラル・ヒストリー・プロジェクトについても紹介しようかなと思っていたのですが、ここまで書いて疲れてしまったので、ひとまずこんなところで。
black_ships at 19:40│Comments(2)│
│アウトプット(?)
この記事へのコメント
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