2009年09月05日

北岡伸一『日本陸軍と大陸政策』(続)

前回のエントリー(北岡伸一『日本陸軍と大陸政策』)は、投稿できる字数の関係で議論の部分を削ったので若干の補足をしておきます。

まず読書会での大きな論点としては、本書は「政治学的」か「歴史学的」かということです。こういった二分法の常として、つまるところ定義次第ということになりがちだという点を踏まえた上でのコメントですが、結論を言えば私はこの本は極めて「政治学的」な著作だと考えています。

確かに叙述部分の細かさや全体論的(holistic)な議論の進め方、政策決定要因に関する多元的な説明等は、読み手に本書の「政治学的」な側面を分かりにくくさせている側面があるのだと思います。しかし、緻密に計算された全体の構図や埋め込まれた視角としての「連合政治」的な政治理解といった点、細かいながらも体系的な叙述は、著者に「政治学的」な意識が極めて高かったことが表れているのではないでしょうか。また、坂野潤治先生が『國家學会雑誌』における紹介で評しているように、本書は「三つの時期の三つの大問題と三つの小問題をめぐる陸軍内部の三つの潮流」を分析しているわけですが、これによって一貫した叙述が犠牲にしたという面はあるにせよ、巧妙に単一事例の分析ではなく、時代や政策を比較した研究になっている点も特筆すべき点だと思います。

五月雨式に感想めいたことを書いていけば、こうした本書の分析対象の設定や議論の構図の作り方(そしてそれが抱える問題)は、戦後の日本外交を考える際に参考になるのみならず、例えば様々な政策領域で様々な形の展開があり、各国が入り乱れて各政策が展開していったヨーロッパ・デタント~超大国デタント期のヨーロッパを考える際にも参考になるのではないでしょうか。この点は、昨年ある授業でMBFRに関するイギリスの外交文書集を感じたことでもありますが、当該期のヨーロッパをどのような形で分析するのかは実に難しい問題です。政治学的な分析をするのみならず、そこに歴史の文脈を織り込んでいく、または逆に政治学的な問題関心を抱きながら歴史学的な研究を進めていく際には、本書は一つの手がかりを与えてくれるように思った……のですが、これはやや飛躍しすぎているかもしれません。

そんなことを、読書会の後に色々と考えました。他にも、細かい点や専門的なことで話題になったこともあるのですが、その点は関連する研究を読んだ時にでもまた書くことにします。

at 10:51│Comments(0)本の話 

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