2009年07月04日

猪木武徳『戦後世界経済史』

↓の本について、書評形式で短評を書こうと思ったのですが、なかなかうまく書けないので、思いついたことをダラダラと書いていくことにします。というわけで、内容の紹介や個々の論点は割愛しています。はしがきと第一章を読めば、大まかな内容は分かると思うので、ただ単にお勧めということで、読み飛ばして下さい。

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猪木武徳『戦後世界経済史 自由と平等の視点から』(中公新書、2009年)

 昨今の新書ブームの中で、新書の元祖である岩波新書、そしてかつては御三家の一角を占めた講談社現代新書の凋落が著しい中で、孤軍奮闘しているのが中公新書ではないでしょうか。題名で奇をてらうこともなく、淡々とその道の専門家による一般読者向けの良書を刊行している中公新書も刊行2000点を超えたそうです。記念すべき創刊2000冊目となるのが、この猪木武徳『戦後世界経済史 自由と平等の視点から』です。
 話は逸れますが、『戦後世界経済史』とともに天野郁夫『大学の誕生(上)』を刊行してしまう辺りも、他の新書とは完全に一線を画した中公新書の面目躍如という感じでしょうか。さらりとこうした本を出せるのは、今や中公新書だけだと思います。

 第二次大戦後から20世紀末まで、世界各国がどのような経済的変遷を辿ったのかを、データと経済学の論理、政治、さらには「自由」と「平等」という価値に踏み込んで概観した本書は、初学者からその道の専門家まで、幅広い読者に歓迎されるのではないでしょうか。古典から最先端の研究にまで目を配り、深みを出しつつ平易な文体で書かれ、「引用」されるというよりは「参照」される、初学者から専門家まで広く読まれる、そんな新書の理想像のようなものをこの本は感じさせてくれます。
 著者が言うように「全体を大雑把に見るということは、細部を正確に観察するのと同じくらい、時にはそれ以上に重要」(i頁)なのだと思います。しかし、第二次大戦後の世界経済と一口に言っても、戦争の荒廃からの復興を目指す国、独立=脱植民地化を目指す国がそれぞれあり、そこに米ソのグローバルな冷戦が関係してきます。さらに第一次石油危機という転換点、そして社会主義経済の不調、グローバルかつ巨大な金融市場の形成といった事情が、各国それぞれの事情に重なってくる。こうした状況を、政治や価値の問題に踏み込んで世界全体を見通すことは、まさに「言うは易し行うは難し」ですが、本書は、新書というコンパクトなサイズながら、この困難ながら極めて重要な試みに成功していると言えると思います。

at 11:14│Comments(0)本の話 

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