2009年05月01日

政局から政局へ

博士課程に進学し一ヶ月が経ちましたが、色々な面で生活に変化があったような気がします。

これは学費稼ぎに精を出していた2月以降はずっとそうなのですが、自分の研究関係、研究に関連するアルバイト、インタビューの企画等々、このブログには書けないことに時間を取られることが多くなりました。実際には本も色々読んだり、映画を観に行ったりもしているのですが、何となく面倒になってしまいブログの更新がめっきり減ってしまいました。

と言っても、面白かった本や映画を紹介したりするのは好きなので、このゴールデン・ウィークはちょこちょこと更新していきたいと思います。



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この一週間ほど、ちくま文庫から装い新たに再刊された伊藤昌哉『自民党戦国史』を空いた時間の楽しみに読んでいます。『池田勇人とその時代』(朝日文庫)と共に、日本政治を学んでいるものにとっては必読文献として挙げられるものだと思いますが、首相秘書官として政策実現の現場に立ち会った池田時代と比べると、大平の私的アドバイザーとして働いた三角大福中時代を回想したこの本はより「政局」に特化した本であり、研究のために読むというよりも純粋にわくわくさせられるものがあります。私の胎教である(苦笑)、戸川猪佐武『小説吉田学校』を思い出させてくれる政局にどっぷり浸かった政治の世界を描き出しているこの本を読んで、久しぶりに「政策」ではなく「政治」について考えました。

政治は本来煮ても焼いても食えない泥臭いドラマに溢れた世界であり、政策研究や政治科学的なものばかりを読んでいると、ついついそうしたことを忘れてしまい、研究がどんどん行政学に近付いていってしまいます。自分自身の研究をどのように書いていくかは人それぞれですし、私自身の当面の研究にはあまり政局の話は出てくることは無いと思います。しかし、そうではあっても生の政治の本質的な要素をしっかりと意識しておくかどうかは重要な問題ではないでしょうか。

飯尾先生の近著のタイトル(政局から政策へ)に象徴される政治観には、賛否を含めて様々な意見がありますが、この『自民党戦国史』で描かれている世界は、飯尾先生が対象とした時代の直前までであり、その時代は言うなれば「政局から政局へ」といった趣があります。自分自身の研究対象がこの時代なので、改めてこの本を読んで色々と考えさせられました。

ただし、大平の死後を描いた第3部(単行本では『新・自民党戦国史』)は、著者が直接見聞きした話ではなく、新聞等の公開情報が中心となっているので、生々しい政治家の心の襞に触れるような迫力はありません。とはいえ、著者の中曽根に対する見方や、鈴木内閣以降の田中角栄の捉え方といったものはなかなか興味深いものがあります。

それにしても下巻の表紙がハマコーとは…。確かに四十日抗争を振り返る際にしばしば語られるエピソードの一つではありますが、青嵐会の下っ端が騒いだシーンが表紙ということに、このテレビ時代の影響を感じずにはいられません。



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半年に一度の刊行を常に待ちわびている『アステイオン』の最新号(第70号)が刊行されました。

昨日たまたま生協に行ったら売っていたので即購入し、じっくり読みふけってしまいました。といっても特集の「冷戦終結20年」にはまだ目を通していません。いつもの通り「世界の思潮」「エッセイ」などをザーっと読み、それからダニエル・ベルのインタビューと楽しみにしている二つの連載(御厨貴「近代思想の対比列伝――オーラル・ヒストリーから見る」/山崎正和「神話と舞踊――文明史試論」)を読んだところで昨日は時間が無くなってしまいました。

「近代思想の対比列伝」は、第1章として後藤田正晴と矢口洪一を取り上げられていたので、第2章は誰になるのかなっと思っていたのですが、宮澤喜一と竹下登の二人が主役でした。ちょうど『自民党戦国史』を読み、「三角大福中」の時代について色々と考えた後だったので、この後に続く「安竹宮」らニューリーダーの時代について考えるいい機会になりました。もっとも、今回は福本邦雄のオーラルを引きつつ全体像を概観した上で、具体的にそれぞれについて論じられたのは安保闘争の前まででした。今後の展開が楽しみです。

かっちりとした論文ではなく、かといってただの雑文ではない良質な文章が詰まっているので、直接何かの役に立つわけではないにしてもとても知的に充実した気持ちになるのが『アステイオン』のいい所です。『アステイオン』の編集方針のようなものが、ダニエル・ベルへのインタビューの行間から伝わってくるような気がします。

今日も休憩がてら、時間が出来たら『アステイオン』を読み進めることにしようと思います。

at 12:07│Comments(0)本の話 

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