2009年01月22日

田中均『外交の力』

先週末の研究会で取り上げた、マイケル・シャラーの『アジアにおける冷戦の起源』の書評を書きたいのですが、その前に↓について簡単に書いておきます。

e5862dfd.jpg

小泉内閣が退陣してからまだ二年半弱ですが、既にそれなりの数の回顧録が刊行されています。『外交の力』は、外務官僚としては異例なほどメディアで名前が取り上げられた田中均元外務審議官の回顧録です。

内容的には、対談『国家と外交』(講談社、2005年)や、『論座』『現代』に載った回想、現役の外務官僚として『中央公論』に書いたものなどと重なる部分が多く、これから読むことを考えている人はあまり多くを期待しない方がいいというのが率直な感想です。もっとも、これは外交史研究の資料としての価値を念頭に置いての感想なので、外交を考える材料としては悪くはないのかもしれません。

ここに書いておきたいのは、この本の細かい内容や小泉政権期の外交に関することではなく、この本にほとんど出てくることが無い二つのことが気になったということです。その二つとは、防衛庁(省)&自衛隊と韓国です。

著者は、外務本省幹部として、アメリカやカナダとの経済関係を担当する北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、現在では筆頭課長の一つと言えるポストとなった総政局総務課長、北米局審議官(日米安保再定義を担当)、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政務担当)を歴任しており、80年代後半から外務本省の中枢を歩んできたと言っていいと思います。

関わった案件を思いつくままに挙げれば、日米貿易摩擦、北朝鮮核危機、日米安保再定義、FTA交渉、拉致問題、北朝鮮との国交正常化問題といったところなのですが、どれも冷戦後の日本外交を考える上では欠かすことの出来ない重要なテーマです。アメリカと朝鮮半島に関わる問題が多い印象があります。

しかし、なぜか防衛庁と韓国がこの本ではほとんど存在感がありません。前者については、関係者が存命中ということやまだ生々しい問題なので触れられないということなのかもしれませんが、それでも日本外交を考える際に安全保障の重要度が上がり、防衛庁の存在感が増してきているにも関わらず、この本からはあたかも全てが外務省で決められているかのような印象を受けてしまいます。

一方で韓国がほとんど出てこないのも興味深い問題です。著者が担当してきたのが、韓国よりも北朝鮮に関わる問題が多かったということも関係しているのでしょうが、東アジア共同体論を考える際にも、またよりマクロに東アジアの国際関係を考える際にも、著者の頭の中にあるのは日米中の三ヶ国のようです。個人的には、今後の東アジア国際関係では、日韓がどれだけ緊密に協力関係を築くかということがより重要になってくると考えているので、著者の韓国パッシングのような見方にはやや違和感を覚えました。

at 18:30│Comments(0)本の話 

コメントする

名前
URL
 
  絵文字