今年もよろしくお願いします。ジョセフ・ナイ駐日大使(?)。

2009年01月06日

沢木耕太郎『危機の宰相』

静岡と東京だけかもしれませんが、この一週間ほど快晴が続いています。

天気とは関係なく、毎日は淡々と過ぎていきます。それでも天気が良ければ、何をしていても気分がいいというものです。たとえ大学院棟にこもっていても、休憩で外に出た時にきれいに澄んだ青空を見ると、爽やかな気持ちになります。



研究に没頭していると、ついつい何を読んでも自分の研究に引きつけてしまいがちです。日々自分の力のなさを感じていると、他人の粗が目につきやすくなってしまい、本を批判的に読み過ぎてしまうこともあります。これらはこれらで意味のあることなのでしょうが、やはり本は著者の意図や思いを汲み取ってじっくり読むことが大切なのだと思います。

バランスを取るてっとり早い手段は、自分の感じたことや本の面白さを人に分かるように話し、そして書くことです。ただ自分で色々と考えることと、人に分かるように自分の考えをまとめることの間には大きな差があります。これがなかなか出来ないために自分の研究で苦しんでいるわけです。

そんなわけで、今年はアウトプットを強化したいと思います。そう書くのであれば、ブログに雑文を書くのではなく論文を書くべきなのかもしれませんが、とりあえず短評(というより感想)を一つ。

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沢木耕太郎『危機の宰相』(文春文庫)

 「所得倍増」に沸いた1960年代。「所得倍増」は偶然の産物ではなかった。「政治の季節」から「経済の季節」へと移り行くこの時代を宰相として舵取りした池田勇人、池田を宏池会事務局長として支えた田村敏雄、官庁エコノミストの雄として知られた下村治――「所得倍増」は、大蔵省という組織では「敗者」であったこの三人の「夢」であり、それが現実化したものだった。

 1977年に『文藝春秋』誌上で発表された「危機の宰相――池田政治と福田政治」を基にした本書は、池田・田村・下村を軸に「所得倍増」の実相に迫る。著者の「敗者」達への眼差しは暖かい――それは、『一瞬の夏』でのカシアス内藤への著者の姿勢を想起させる。

 「所得倍増」には、発想、計画、政策、そしてブームという四つの側面がある。著者は、その一つ一つを丹念に追いかけ、その実相を明らかにした。単行本の解説(御厨貴)の表現を借りれば、池田達の「夢」が実現した1960年代は、戦後日本の「青春の時代」であった。「よき敗者」たろうとした吉田茂によって、戦後日本はそのレールがひかれた。「吉田学校の優等生」である池田によって築かれた「所得倍増」という「夢」は、戦後日本の「青春の時代」となり、安保闘争後、瞬く間に世の中の空気を変えたのだった。

 良質なノンフィクションには、人と時代を切り出す力がある。インタビューを通じて、書き手は人から時代を感じ取り、そして時代を描き出す。人が時代を作り、時代が人を作る。当たり前ながらついつい忘れてしまいがちな人間の力を、本書は思い出させてくれる。

at 23:50│Comments(2) 本の話 

この記事へのコメント

1. Posted by hori   2009年01月08日 00:20
えぇっ!
お、おもしろそうな本!!!
あと少しだし、
修論終わったら絶対よんでみなきゃ。
2. Posted by 管理人   2009年01月08日 22:38
今からするともう歴史物だけど、かなりいいノンフィクションなのでお薦めです。
修論ラスト頑張ってね。

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