2008年12月25日

停滞。

「クリスマスにも関わらず大学に…」と書きだそうと思ったのですが、よくよく考えてみれば三田に来てからクリスマスもしくはクリスマスイブに大学に来なかったことは無かったので、特別でも何でもなく毎年のことでした。大学院棟にもいつものメンバーが勢揃いしています(「クリスマス爆撃」を研究している先輩はいなかったのですが、何か意味があるでしょうか)。



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↑読了しました。1945年から1964年までと、一次資料に基づいた歴史研究としては比較的長いスパンだった研究ということもあり、細かいところを逐一検討するというよりは、日本の労働政治及び国際労働運動の対日圧力を中期的に俯瞰している印象です。

日本の労働政治にもそれなりの研究蓄積がありますし、国際的にも労働運動史は一つの学問分野として確立しています。が、自分には全くと言っていいほどそれらの分野の土地勘が無いので、この本を先行研究を踏まえてどのように評価すべきかというのはなかなか難しい問題です。労働運動史としてではなく、日本政治外交史やアメリカを中心とした諸外国の対日政策の観点からも評価が出来るでしょう。

いずれにしても、様々な問題意識を持ちながらも、アーカイヴァル・ワークを行った上で筋の通った歴史を叙述し、さらに明確なメッセージを打ち出している点に圧倒されました。日本政治外交史の観点から見れば、本書はある種の「変化球」なのかもしれないですが、アメリカの対日労働政策から見れば「社会民主主義という選択肢」が戦後日本にあり得たというのは、非常に重要な意味を持つものです。もちろん、それが現実的な選択肢であり得た時代がいつ頃なのかということは、より深く考えなければいけない問題です。

この本は、少し自分の考えを整理してから書評形式で紹介することにしようと思います。



この本以外にもこの一週間でいくつか積読になっていた本を読んだのですが、どれもいまいちという感覚を持ってしまったのは、この本に圧倒されてしまったからでしょうか。とはいえ、一次資料が公開されているにもかかわらずそれを読んでいないことや、最新の研究成果が全く反映していないものが物足りないのは当然なのかもしれません。

もっとも、一次資料がなければ面白いものが書けないわけではないのも事実です。後期の授業で読んだレイモン・アロンの本や評論は、一次資料など読まずに書かれたものですが、非常に深いものです。戦後日本についても、高坂正堯の時評や永井陽之助の同時代的な評論は今読んでも示唆に富む面白いものです。

どうせなら「賞味期限」が長い研究をしたいのですが、どうすればそんな研究が出来るのかはよく分かりません。それでも、外交史研究ならば、一次資料に基づいて着実に研究を進めること、その上でしっかりと議論を作ること、この二つを押さえておくことが、院生である自分にとってまずやらなければいけないことなのだと思います。



さて、肝心の修士論文はと言えば、停滞気味です。

人によって執筆スタイルは様々だと思いますが、歴史研究は一次資料に研究の多くを依存するという性質上、初めから明確な分析視角や枠組み、結論が定まっていることの方が少ないのではないでしょうか。私の場合は、あるオーラル・ヒストリーにかなりヒントを得て研究を始めたのですが、それでも書き上がったものを改めて読んでみると、自分が当初考えていたものからは大きく変わっていました。

問題意識を持ち、それなりに枠組みを設定しながら資料を読んでも、実際に出来上がってくるものは、やはり資料に引きずられる側面があります。そして、書き上がった叙述を基に論文の枠組みや議論を再検討した上でまた資料と格闘、さらにまた枠組みや議論を再検討、そしてまた資料…。そんな繰り返しをしながら論文を書いていくというのが現時点での自分のスタイルです。

昨年度に書き上げた論文の枠組みや議論は、当然昨年度読んだ一次資料を踏まえて作った叙述に基づいたものです。今年後半に取り組んだ投稿論文執筆の際に新たに開示された資料を大分読み込んだのですが、幸いなことに議論の枠組みが大きく崩れることはなく、むしろ議論が仮説的だった部分の実証に繋がるものがほとんどでした。

今回の作業では、ネット上でダウンロード出来るイギリスの内閣文書や、アメリカの国務省ファイルの一部をじっくり読みこんで、草稿に追加していこうと考えていたのですが、実際にそれをするためには議論の枠組みそのものを変更する必要がありそうだということに、この数日で気が付きました。

そんなわけで、今回の改訂は本当に最小限に留めることになりそうです。停滞というよりは、ゴールが大幅に近づいたのかもしれませんが、何となく敗北感・挫折感がするのはなぜでしょうか。結果的に、新たな論文のアイデアが生まれたので、この一週間の作業も無駄ではなかったのですが…。

毎度のことながら、研究は難しいものです。

at 20:03│Comments(0)本の話 

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