2008年11月02日

先週の授業(10月第5週)

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↑HMVに寄ったところ、たまたま並んでいるのを見て、ついカジヒデキのニュー・アルバムを買ってしまいました。DMCで使われている楽曲が違和感なくオリジナル・アルバムに入っているのには苦笑してしまいました。当たり前かもしれませんが、若杉公徳が「渋谷系」を茶化して書いた「甘い恋人」や「ラズベリー・キッス」の歌詞以上に他の曲が「オシャレ」なので、聴いているのがやや恥ずかしい感じです(といいつつ論文を書きながら聴いているわけですが…)。



研究の具体的な話やバイトの話をここに書けないためか、それ以外の読書がほとんど出来ていないためか、はたまた全然遊んでいないためか、最近はもっぱら授業の話ばかりを書いているような気がします。高校時代まで全く不真面目な学生だった自分がこうなるとは人生はよく分からないものです。

日本シリーズに自分の関心を集中したいのですが、夜に予定が色々入っているのであまり観ることが出来そうにないのが残念です。去年のこの時期は「幻の修士論文」執筆中だったのですが、中日優勝の瞬間は中日ファンの先輩と共にビールを飲みながら観ていました。今年はどうなることやら。



というわけで授業の話。

<水曜日>

3限:国際政治論特殊演習(院ゼミ)

今回のテキストは、Oran R. Young,“Aron and the Whale: A Jonah in Theory,”in Klaus Knorr and James N. Rosenau (eds.), Contending Appraches to International Politics, (Princeton, New Jersey: Princeton University Press, 1969)。

こういった本があるという存在を辛うじて知っているだけで、恥ずかしながら収録されている論文を読んだのは今回が初めてでしたが、イギリス的なクラシックなアプローチとアメリカ的な科学的アプローチの論争が全面に取り上げられている非常に重要な本であり(ネオネオ論争における、Neorealism and its Critics のようなものでしょうか)、ヤング以外の論文も今後読んでおかなければならなそうです。

ヤングの論文の要旨は極めて明快で、要はアロンの『平和と戦争(Paix et Guerre entre les nations)』は理論研究としては失敗である、というものです。もう少し詳しく言えば、『平和と戦争』は?演繹的理論としても、?経験的理論としても、?パラダイムの発展性という点からも失敗である、ということです。ヤングの議論についてはM1の後輩が作ってきたレジュメがうまくまとめてくれていたので、それに沿って簡単にこの後を補足しておくと、さらにヤングは?歴史的分析としても、?政治評論としてもアロンの議論には問題があると徹底的に批判をします。

授業では、さらに旧約聖書から取られたタイトルの意義や、理論とは何かといった点について議論を進めました。結局のところ、ヤングの批判はうなずける面が多いものの、そもそもヤングの想定する理論がどのようなものかといった点が明示されていないことから、突き詰めて考えてみると分からない点も多い、といったことが議論の落ち着きどころとなりました。

ヤングがアロンのスタイルを問題視しているだけで、具体的な議論の中身にはほとんど触れていないことから、今回はアロンの議論そのものについてはあまり議論にならず、なぜか話が知識社会学的な方向へと進んでいったのですが、それはそれで面白かったです。

来週&再来週は研究発表があり、その後は三田祭準備のため休講なので、しばらくアロンはお休みです。

<木曜日>

2限:Alternative Approaches to Japanese Foreign Policy

今回のテキストは、Janice Gross Stein and David A. Welch,“Rational and Psychological Approaches to the Study of International Conflict: Comparative Strengths and Weaknesses,”in N. Geva and A. Minttz (eds.), Decision-Making on War and Peace: The Cognitive-Rational Debate, (Boulder, CO: Lynne Rienner, 1997) でした。論文のタイトルにもあるとおり心理学的アプローチがテーマです。

プロスペクト理論などは多少聞いたことがありましたが、国際関係論における心理学的アプローチをしっかりと読むのは今回が初めてであり、色々と学ぶところが多かったです。心理学の専門用語が多く読むのには苦労しましたが、論旨は明快であり、このアプローチには何が出来て何が出来ないといったことも分かりやすく書かれていたので、初学者にとってはとてもいいテキストでした。

もっとも、この論文で対象となっているのは、国際紛争であり国際政治(国際関係)ではありません。戦後日本が国際紛争に主体として関与した経験がほぼないことを考えると、このアプローチを学ぶことで戦後日本外交をどのように理解することが出来るかはよく分からない点でしたし、理論的視座から日本外交を検討するという授業の目的を考えると、この論文を読む必要があったのかはいまいち分かりません。とはいえ、先生のもっとも得意としているのがこの心理学的アプローチなので、直接授業で色々と聞くことが出来たのはよかったです。

またこの論文では、このアプローチが個人と集団の間でどのように異なるのかといったことが書かれていなかったので、実際にどのように理論を適用していけばいいのかということはいまいちよく分かりませんでした。授業後に先生に質問をしたところ、「そこがなかなか難しい問題で、今は研究者によってアプローチはバラバラだ」と言われて多少は納得したのですが、そう考えると心理学的アプローチが果たして国際関係の理論と言えるのかという疑問が新たに浮かんできました。この話は難しいのでこれくらいで。

再来週にある次回が理論のお勉強の最終回です。

4限:国際政治論特殊演習(もう一つの院ゼミ)

院生の研究発表×2。片方の発表は、資料の使い方やテーマの背後にある国際政治の理解といったことで若干の議論になり、もう片方の発表では、テーマそのものが持つ難しさが議論になりました。人の発表にコメントをするのは出来ても、そのコメントがそのまま自分の研究にも当てはまることがあるというのが研究の難しいところだと改めて感じました。

<土曜日>

5限(?):プロジェクト科目(政治思想研究)

講師の先生の関係で、土曜日に授業がありました。今回は、梅田百合香「レオ・シュトラウスとホッブズ――近代、自然権、アメリカ」『思想』2008年10月号、がテキストとして指定されていました。ちょこちょこと調べてみたところ、今年の『思想』に他に2本の論文(「ホッブズの軍事論とリアリズム―戦争拒否の自由と国家防衛義務」「ホッブズの国際関係論――自然法と諸国民の法について」)が発表されていたので、それも読んでいったのですが、授業でもこれらの論文について言及されていたので読んで行ってよかったです。

例の如く内容については次回の討論を踏まえて書こうと思いますが、ここでも少しだけ。指定されていたテキスト及び他の2本の論文に共通して出てくるのが、「ホッブズ」と「ネオコン」です。各論文には、ホッブズ→シュトラウス→ネオコンといった一時期流行った議論に対するホッブズ研究者からの応答という「問題意識」もあるようです。

こういう「問題意識」の話から、授業後の懇親会で先生が、政治思想研究と国際関係研究を架橋する必要性、相互の歩み寄りの姿勢を説かれていたのがとても印象的でした。しかし、そういった問題意識があっても、なかなか国際関係論における議論の進展は思想研究者にまでは伝わっていないようで、その点が若干もどかしい点でもあります。ここで思い出すのが、ジョナサン・ハスラムによるE・H・カーの評伝にある一節です。

 もしも私[カー]が、学問的ディシプリンとしての国際政治学の定義を示せ、と言われたとしたら、私はそれを、政治哲学の国際関係への適用だと呼びたい気持ちに駆られる。それは、今まで主に歴史学の一部分として研究されてきたのであり、決して、政治科学の領域として研究されてきたのではなかった。
 しかしこの意味では、国際政治学とは、取りも直さず、生きた現実的対象に関わるものなのであって、もっぱら文献や記録の研究に専心するようなものでは決してない。(ジョナサン・ハスラム『誠実という悪徳――E・H・カー1892-1982』現代思潮新社、2007年、375頁)


このような出自を持つはずの国際政治学は、いつの間にかその出自を忘れてしまったのではないか。さらに言えば、国際政治学を生みだした側の政治哲学(ここで哲学という言葉を使うのが正しいのかは分かりませんが)の側は、国際政治学を自らの枠外にあるものとしてしまったのではないか。そんな感想を改めて持ちました。

もっとも、国際関係論の側では近年こうした問題意識が徐々に共有されてきており、本格的な研究書や概説書が刊行されるようになっています。政治思想と国際政治は、今の自分の研究の中では全く繋がっていないので、いずれは繋がった研究を出来るようになればいいなと思うのですが…。

at 13:52│Comments(3)ゼミ&大学院授業 

この記事へのコメント

1. Posted by りんむー   2008年11月02日 17:10
アロンは「国際関係の理論とは何か」という論文を書いてます。
Aron, Raymond, “What Is a Theory of International Relations?” Journal of
International Affairs, Vol.2, No.4, pp.185-206.
ご参考まで。昔取った杵柄。
2. Posted by 管理人   2008年11月03日 00:33
カジヒデキに反応かと思いきやアロンの方ですか(笑)
確かその題名の論文が『国際関係の理論と現実』(法律文化社)に収録されていたような気がするのですが、それですかね? 学部ゼミで読んだ覚えがありますが、すっかり内容は忘れてしまったので、読みかえそうと思います。
3. Posted by りんむー   2008年11月03日 05:26
そう、その『国際関係の理論と現実』はアロンの同論文を含めたInternational Affiairsを翻訳したもの。ウォルツも寄稿してたと思う。いまとなってはレアで、実は僕は持ってない。
@DCのとあるスタバにて

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