2008年05月26日

耳学問。

研究会があったり、学部ゼミのOB会があったり、とせわしなく動き回っている内に週末が終わってしまった。

OB会は、先生が研究休暇で二年間いなかったので、我々の代が卒業して以来二年ぶりの開催。「旧交を温める」という言葉どおり、卒業以来会う友人や先輩と語らいあういい時間だった(この話とは全く関係無いが、←の文を書いていると、最初変換ミスで「いい次官」と出てきた…)。

地方組・海外組は来れなかったが、みなそれぞれ元気にやっているようだ。先輩たちと話している時に、「上から目線」というキーワードが出てきたことに驚いた。これは大学の伝統なのか、それほど「上から目線」だった印象のない先輩数人が、職場では「上から目線」として通っているらしい。同じようなことを以前、他大学の大学院に行った友人も言っていた。学部時代から「ミスター上から目線」として通っていた友人は、社会に出たらすごいことになるかもしれない。



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↑の著者二名(それぞれ、1950-1958年と1958-1969年の執筆担当)を招いてのEU研究会に行ってきた。自分の専門は日本外交であり当面は1970年代を研究するつもりなので、研究に関係しないと言えばしないのだが、後輩の話を聞きかじっていたり、授業で戦後ヨーロッパ外交を勉強する機会も多いので参加させていただいたのだ。読書会や授業の関係で最近両先生の博士論文を基にした著書をそれぞれ読んでいたので楽しみにしていた。

↑の本は、やや全体の統一に欠けていたり章によって叙述スタイルや分析の焦点が異なったりといった問題はあるものの、ヨーロッパ統合を考える上で、日本語でまず手に取るべき一冊なのだろう。ちょうど週末の「毎日新聞」の書評で取り上げられていた(リンク)。

研究会に参加するにあたって流し読みしかしていなかった本書の中から、序章「ヨーロッパ統合の歴史 ―視座と構成―」、第4章「シューマン・プランからローマ条約へ 1950-58年 ―EC-NATO-CE体制の成立―」、第5章「大西洋同盟の動揺とEECの定着 1958-1969年」、終章「ヨーロッパ統合とは何だったのか ―展望と含意―」をそれぞれ読み返していった。第5章は、著者の博士論文と全く同じ時代を取り上げていることもあって非常に読み応えがあるとともに、過不足なく分かりやすい記述が印象的で、本書の中で最も完成度が高い章だと感じた。

研究会は、前半で(いつも授業等でお世話になっている)第4章の著者である先生による本書の成り立ちや担当された章を中心とした発表、後半で第5章の著者の先生からヨーロッパ統合史の簡単なヒストリオグラフィーと60年代(―70年代)研究の射程に関する発表が行われた。

とにかく考えさせられたのは、日本外交研究と比べた時の全体的な水準の高さだ。この理由は大きく二つある。一つは、資料、一つは研究者の層の厚さだ。資料に関しては、とにかく日本の一次資料はヨーロッパ各国と比べて大きく公開状況が遅れている。また、公開されたとしてもどれだけ重要な記録を文書の形で残しているかが定かではない。研究者の層の厚さは、やや仕方がない面もあるのかも知れない。そもそもヨーロッパ各国にそれぞれ研究者はいるわけだし、それにアメリカやアジアにも研究者が数多くいるわけだ。

そんなわけで、先行研究の数そのものが戦後日本外交研究とは一桁ところか二桁近く違うわけだ。発表された両先生は、こうした研究状況の中で研究を進められているわけであり、そこに入っていかなければいけない後輩は本当に大変なのだな、と思ってしまった。

ヨーロッパ外交は、自分で資料を読んでいるわけでもないし、いくつかの研究を読んだり聞きかじっているだけだが、それでも自分の研究を進める上でも参考になることが少なくない。むしろ自分の専門分野以上に様々なヒントが転がっている印象がある。お手軽な耳学問をしているだけではいけないのだろうけれども、今後も動向を気にしつつ良質な研究を読み進めていきたいと思った。

at 11:12│Comments(0)本の話 

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