2008年05月10日

あっという間に…。

もう土曜日。

やらなければいけないことをやっているとすぐに時間が経ってしまう。「昨日の自分よりも成長しているか」という問いにすぐに答える自信はないけれども、「一週間前の自分よりは成長しているか」という問いには自信を持って「はい」と答えられるように毎週を過ごしていきたいのだが…。そんなわけで今週は色々と考え、悩みながら過ごした一週間だったような気がする。



今週の授業。

<水曜日>

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↑Part1:International SocietyのChapter3 A New Solidarism? が今週の範囲。

前章では、国際社会の近代化の歴史=Pluralismの原理にSolidarismの原理が接ぎ木されていく過程が描かれていた。その結論部分では、冷戦の終結によって、イデオロギーの共存原則ではなく、人類の連帯の原則に基づくグローバルな共同体を国際社会に取って代えることが「可能」になった、とされていた。

そうした国際社会の近代化過程を描き出しながらも、本章では楽観的・熱狂的なSolidaristの考えの限界を著者は指摘する。近年の国際政治を考える上で重要となる二つの要素として著者が掲げるのは、メンバーシップと境界の問題である。そしてメンバーシップを考える上で、第一に新しい国家を作る際の所有の安定・約束の履行を果たすための国家の重要性、第二に非国家アクターのメンバーシップは国家間の合意に基づくこと、第三に責務(Responsibility)を果たすべきアクターは誰なのか=国家以外に存在しうるのか、という三つの問題を著者は提起する。いずれも現代の国際社会を考える上での国家の重要性を改めて指摘する議論である。

この議論に対する批判としてまず考えられるのは、著者の国際社会観に潜む保守性(現状維持志向)に対する批判であろう。この批判は有力だが、それに代わるオルタナティブは存在するのだろうか。こう問われた時にいかに答えられるのか。納得がいくようないまいち納得がいかないような釈然とした気持ちになる議論だ。「これをその通りだと若者が思ってはいけない」というようなことを先生が言っていたが、重い問いであり色々と考えさせられる。

次回からは「主権」の問題がテーマになる。

<木曜日>

シンポジウム開催のため4限は休講だった。

2限:国際政治論特殊研究

今週は授業で扱うテキスト、Documents on British Policy Overseas (DBPO), Series3, Volume3, Detente in Europe のPrefaceが範囲。実際に授業で読むのはMBFRに関する部分のみだが、Prefaceは全体に渡るものである。個人的にはMBFRについて書いた部分よりも、英ソ関係に関する部分の説明( Cassandra to the Western Alliance )が興味深かった。

複雑なヨーロッパ国際政治の中でも特に70年代の複雑さは群を抜いている。陣営間の関係(東西関係)、各陣営内の関係(西西関係、東東関係?)、陣営をまたいだ二国間関係、陣営内の二国間関係のそれぞれが、政治・経済・軍事のみならず価値をめぐる領域に置いても複雑に展開される。

思いつくままに時系列も無視して出来事を挙げていっても、ドゴールによる対ソ外交及びNATO軍事機構からの撤退、アルメル研究、イギリスのスエズ以東からの撤退、EEC加盟、ドイツの東方外交、東西ドイツの相互承認、プラハの春、米ソデタント、ヨーロッパ・デタント、米中接近の影響、CSCE、MBFR、東西市場関係、石油危機、第四次中東戦争、ドル・ショック、SALT、NPT、ベトナム戦争、…etc.

しばしばこの時代はデタント時代と形容されるが、以上に挙げた様々な事象はデタントという言葉からのみでは説明出来ない。この複雑なヨーロッパ国際政治をどのような視角から切り取るのか、が研究の腕の見せ所になるのかも知れないが、これはちょっとしんどいなー、と門外漢としては思ってしまう。

今回の授業はこうした複雑なヨーロッパ国際政治について、先生から簡単な解説があったのでうまく次週以降の見取り図が示されたように思った。ちなみに今回も修士一年生の発言は発表者を除いてなし(だったように思う)。どうやらこれは今年の一年生の個性の気がしてきた。これは仮定の話だが、発表や討論の準備をした時には話せるのであれば、普段から思っていることを積極的に話していった方が授業全体にも貢献すると思うのだが。もったいない。

5限:プロジェクト科目

同じ時間に、ヨーロッパを代表する国際政治史家であるWilfried Lothの講演があった。そちらに行こうかどうかかなり迷ったのだが、Lothの論文や本を恥ずかしながらほとんど読んでいないので、それなら行っても仕方がないかな、と思いプロジェクト科目に参加した。

今回は、先週の講演を受けての討論だった。先週は、日本を代表するトクヴィル研究者である松本礼二先生が講師だった。もっとも、現在行っている研究についての講演ではなく、自らの研究来歴を研究史と重ね合わせながらざっくばらんに話すというものだった。それはそれで面白かったのだが、あまりにざっくばらんだったので、今週どのような議論になるのかは心配だった。しかし、ふたを開けてみれば、政治思想史を専門にする先輩のいつものことながら見事な発表で、思いのほか充実した話になったように思う。政治思想史家の考える、思想史研究の意義の話は、外交史家を目指す自分にとっても十分に考えさせるものだった。

もう一点興味深かったのは、トクヴィルは「オルタナティブを探すための思想家」「使いようのある思想家」というある先生のコメントだ。確かに様々な議論に様々な形で顔を覗かせるトクヴィルにはそういったイメージがある。

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『アメリカのデモクラシー』の新約(岩波文庫)は、2005年に第1巻が出てからストップしていたが、先月ようやく第2巻(上)が発売された。今月第2巻(下)も出るようなので、時間を見つけて一気に読んでしまいたい。訳者解説は第2巻(下)に付されるということなので、それも楽しみだ。もっとも今月第2巻(下)が出るのであれば、訳者解説を使って先週の講演をやっていただいてもよかったのではないかと思わなくもない。

at 11:09│Comments(0)ゼミ&大学院授業 

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