2008年04月12日

新しいキャレル。

一応、あくまで一応であるが、我が大学では大学院生は院棟に自分の机とロッカーを貰えることになっている。木の板で仕切った机を二人で共用はないだろうとか、京大は24時間使える研究室があるのになー、などと思い、入学当初はあまり使っていなかったのだが、手元にいろいろと資料を置いて研究を進めるには意外といいので、結局去年は論文を書いている間ずっと通いつめていた。図書館、ロースクール棟の自習室を使う手もあるのだが、移動が面倒というものぐさな理由で最近はもっぱらキャレルを使っている。

年度ごとに場所を変わらないといけないのは面倒だが、同じ場所ばかりでは飽きるのでそれはそれで悪くない。一年目は、北側の窓際で人も少なく東京タワーが見えるという結構いい場所だった。二年目は、入口近くの席だったが、隣が某後輩ということで意外と悪くなかった。今年は、南側の窓際というこれまたいい席だ。中の環境はもちろん良くないが、窓を見れば今までと違う景色が楽しめる。日当たりがかなりいいので、夏は暑そうだが…。難点は自分のキャレルの電源が「死んでいる」こと。机の電気がつかない、といのはいかがなものだろう。幸いちょっとだけ離れたところの電源は使えるので、パソコンを使う際はそこの電源を使うことにした。

そんな感じで、新しいキャレルを使いつつ、授業や勉強会関係の文献を読む毎日だ。早く「貯金」を作って、新しい研究に取り組みたいのだが、四月五月は読む量がやや多いので、結局あと一週間くらいは研究にかかれそうにない気がする。焦らず着実にこなしていきたい。



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一昨日読了。もっぱら速読派の自分としては異例なほど時間をかけてじっくり読んだ。

読み始めた時は、学部時代に受けていた授業はこの本の中から、先生がうまくその時々の関心に沿って事象をピックアップして話していたのかなと思ったのだが、自分が書いたノートを見返してみるとこの本には載っていない話も結構先生が話していることに気が付いた。書き上げた直後から今でも「迷い」がある本だ、と言うことの意味が少しだけ分かったような気がする。

今日の国際政治は経済問題と、国際経済は政治と切っても切れない関係にある。本書は両者にまたがる広大な領域に挑み、しかもそれを一つの一般理論で切るのではなく、社会科学の古典や歴史的知見に学びながら、多角的な記述とポイントをおさえた資料によって、複雑なリアリティをすくい上げていく。変動する世界と知的に向き合うための最良の一冊。


という出版社の紹介と帯の説明文は、簡略ながら要を得た本書の説明となっている。

それにしても幅が広く深い。研究に求められるのは、やはり議論の明快さが一番重要だと思うのだが、学部時代の教育として重要なのは明快さよりも、世の中が多面的なものだということを認識することだと思う。もちろん多面的なものをただ多面的と考えるだけでは不十分であり、それをうまく整理しつつ論じていくことが大切なのは言うまでもない。北米流のIPEに関する日本語の教科書は最近になってかなり増えてきたが、はっきり言ってしまえばそれは英語で向こうの教科書を読めば済む話だ(読めればだが)。

この本は、そうした教科書とは一線を画している。古今東西の古典や研究を引きながら、幅広く国際政治経済を論じている。第一章では、基本的な概念やその相互の関係を論じ、本書全体の骨格となる認識を紹介している。政治経済という領域はやや分かりにくい領域であり、この整理をせずに各論に進むとますます議論が分からなくなってしまうからだろう。そして、第二章で国際政治経済全般について史的概観を行う。とかくこの分野は「今」に関心が集まりがちであるが、そこを焦らずにまず歴史を振り返ってその中に「今」を考えようとするところが著者らしい。この第二章までが、本論に入るまでの基礎部分といったところだろうか。

そういった意味では、第三章~第五章が各論ということになる。第三章では「富をめぐる政治学:市場とその限界」を、第四章では「権力をめぐる経済学:国策と経済」を、第五章では「世界政治経済の構造論:社会システムと経済」をそれぞれ射程に置いて説明が行われている。初めの二章とこの三つの章を踏まえた上で最後に置かれているのが第六章「グローバル化の諸問題」である。ここでようやく本書は「今」を正面に据えることになる。はじめから「今」を論じるのではないところに、大学で学ぶべきことはどういったことか、という著者のイメージが表れているように思う。

全体で300頁を超える教科書だが、右半分は全て引用(及び著者による補足説明)であり、左半分だけ読めば150頁程度である。文字のポイントも比較的大きめなので、まずは左半分のみをじっくり読んでいくといいだろう。学部で読んでももちろん面白いと思うが、自分が研究の領域に少し足を踏み入れかけている時に読んだことによって本書の面白さは倍増したとも思う。

次は教科書ではなく師匠の研究をじっくり読みたい。

at 11:58│Comments(0)本の話 

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