2008年03月17日

飯尾潤『政局から政策へ』(NTT出版)

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円の急騰のニュースを見ながら、こんな時に日銀総裁人事を政局にするのはアホだな、という感想と、洋書を買い込むのをもう少し待てば良かったかな、という感想を持った。

そこで思い出したのが、1997年から1998年にかけての金融市場を中心とした世界経済の混乱を描いた竹森俊平『1997年 世界を変えた金融危機』(朝日新書)だ。世界経済と日本経済をフランク・ナイトやミルトン・フリードマンらの学説をうまく織り交ぜながら1997年の金融危機を論じた『1997年 世界を変えた金融危機』は、経済学の知識がほとんど無い自分でも楽しめた一冊だ。「1997年」と銘打ちながら2007年夏のサブプライムローン問題についても若干の言及がされている。2007年夏に端を発するサブプライム問題が、ここにきて再び世界経済へ大きな影響を与えつつある。

今の身分だと円高によって海外旅行や洋書が安くなるのは歓迎なのだが、今回は円高というよりもドル安観が強い。今回の事態に、今の日本政治はうまく対応することが出来るのだろうか。

やはり2000年代は、30年くらい経ってからじっくり検討したい時代だ。



やることが山積していると言いながら、↓を夜や移動の合間、休憩時間に一気に読み切ったので紹介しておきたい。もともと学部に入学した時には、日本外交ではなく日本政治を専攻しようと思っていたので、個人的には満足度が高い。

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飯尾潤『政局から政策へ 日本政治の成熟と転換』(NTT出版)

 本書『政局から政策へ』は、この20年の日本政治の歩みを描き出した「同時代史」である。中曽根内閣における「臨調行革」を現在に至る「改革」の起点と捉え、そして中曽根内閣とそれに続く竹下内閣を「戦後政治の成熟」であり、その「到達点」と位置づけるところから本書は始まる。

 55年体制下で形作られた「戦後政治」の大きな特徴は、政局と政策の分離にあった。「政治家同士の権力闘争が発動された状況が政局」であり、「政治家というのは政局をする動物であって、政策というのは官僚の領域」であるから、「日本政治というのは、「政局」を中心に理解されるべきもので、せいぜいそれに選挙が加わる」というのが、1980年代までの「常識」であった(21-22頁)。そして、竹下こそ、政局と政策の分離に順応した政治家である、と著者は述べる(なお竹下の政治観については、『政治とは何か 竹下登回顧録』講談社、に詳しい)。この戦後政治の「常識」が徐々に変化を遂げていくのが、この20年である。

 中曽根内閣の「臨調型改革」に関する研究からスタートした著者は、現代日本政治研究の第一線に立ち、20年近くにわたって日本政治の同時代的観察を続けてきた。昨年のサントリー学芸賞受賞作でもある『日本の統治構造』(中公新書)では、戦前から日本政治の構造を説き起こし、それが「官僚内閣制」から「議院内閣制」へと移行していく状況を広範な検討から明らかにしている。時代的な変遷や政官関係の分析のみならず、他国との比較の視点も取り入れながら「統治構造」を明らかにした『日本の統治構造』は、その理解を基に現在の日本政治に内在する問題をも析出した著作であった。

 確かな「統治構造」への理解と共に本書の基礎となっているのは、著者の長年に渡る同時代的観察と、現状分析である。副大臣・政務官制度や経済財政諮問会議などの制度の変化、変容する政官関係などについて、著者はその変化が一般に認識される以前から、いち早く分析を行ってきた。こうした著者の研究蓄積に基づいて執筆された本書は、この20年の日本政治に関する最良の同時代史となっている。

 何よりも優れているのは、そのバランスの良さだろう。いたずらに小泉内閣の目新しさを強調することもなく、政局、政策、そして制度の変遷をバランス良くまとめ、中曽根内閣以降20年にわたった「改革」の意味を明らかにしていく。各章毎にテーマが設定されている結果として、やや記述が重複する箇所は見られるものの、全体としてうまくメリハリをつけながら日本政治の展開を描かれている。

 「政局から政策へ」。この一言に、著者はこの20年の日本政治の変化を象徴させている。そしてまた、小泉政権はその変化の終着点ではなく「折り返し点」だというのが、著者のメッセージである。現在の日本政治は、衆参のねじれ国会の影響もあり、不透明な情勢が続いている。本書は、落ち着いてこの20年を振り返り、そして今後を考えさせてくれるだろう。

at 18:01│Comments(0)本の話 

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