二度寝がち。オーラル・ヒストリー考。

2007年10月23日

逆説は本当に逆説なのか。

今日の院ゼミは久しぶりに面白かった。発表者が博士課程の院生だったこともあり、本格的な研究発表が二本続いた。一時間半という時間で取り上げるのがもったいない。特に後半の発表は、自分とほぼ同じ時代を取り上げていることもあり、とても興味深いものだった。

外交史研究とは何か? というのはなかなか難しい問題で、そもそも歴史学なのか政治学なのか、というところから疑問は始まる。そんなわけで、学部時代の教育やそれぞれの「趣味」で研究のスタイルというのは大きく変わってくる。もっとも、どんなスタイルであっても、いい研究はいい研究だし、面白い研究は面白い研究なのだ。

今日の二つの発表は基本的には外交史研究といっていいのだと思うが、研究スタイルが片方は「政治学」寄りで片方は「歴史学」寄りと、かなり分かりやすい形で違ったので、それに対する先生のコメントとあわせて、なるほどと思うことが多かった。特に興味深かったのが、先生の「逆説を逆説としてではない形で説明することが大切」というコメントだ。これだけでは何のことなのかよく分からないかもしれないので、簡単に補足しておきたい。

外交史研究に限らず多くの研究の問題設定として、「普通に考えれば○○となるのに、実際は××である。なぜ?」というのは定番である。しかし、それは本当に逆説なのか、ということはよくよく考えてみる必要がある。「逆説」というのは、一般的なイメージがあってそれと異なるから「逆説」と説明されるわけだが、それはむしろ一般的なイメージが間違っているのかもしれない。研究対象や被説明変数の広さによっても異なるのかもしれないが、外交史研究のようにある対象や時代を特定して研究する場合、ある意味での「特殊性」は分析の前提に置かれている。例えば「1970年代の日本外交」のように研究領域を定めれば、その時点でかなり被説明変数は限定されているわけだ。そうであれば、逆説をただ逆説として前提とするだけでは不十分だ、というのが先生のコメントだ。

先生のコメントは外交史研究というより、外交を対象とした政治学的な分析といったイメージでなされたような気もするが、その重要性は外交史研究にとっても十分に当てはまるので、自分にとっても結構考えさせられるものだった。

それにしても外交史研究って、どこにアイデンティティがあるのかがよく分からない。

at 18:24│Comments(4) 日々の戯れ言 

この記事へのコメント

1. Posted by りんむー   2007年10月23日 20:16
僕も参加したかったですね。
2. Posted by kama   2007年10月24日 00:21
僕もよくhypothesisはhypothesisなのか。counter-hypothesisについても考えるようにとのコメントをいただきます。
研究って面白いですね。
3. Posted by syk   2007年10月24日 10:32
非常におもしろかったです。
読みながら、日本語読解力の低下を感じました。笑
社会科学の境界線というのはすごくFuzzyだと思っているけども、↑読んで、「外交史研究」という言い方をすると、確かにそのアイデンティティがよくわからないな、と思いました。まぁわたしが所謂「アメリカ式」に毒されたからかもしれないけど…
4. Posted by 管理人   2007年10月24日 23:08
皆様コメントありがとうございます。
何と言うかここに書いた話は入ゼミレポートの課題図書に『国際関係研究へのアプローチ』(原題"Bridges and Boundaries: Historians, Political Scientists, and the Study of International Relations")を選んで以来ずっと考えてきた話の延長にある話なんですね。ただ、最近はこの本に書いてあることとも若干異なる感覚を持つようになってきたり、色々と難しいもんです。何と言っても「日本政治外交史」なんていう学問の説明が非常に難しい。
ごちゃごちゃ言っても、どんな方法論をするにせよ外交を論じるなら、一次資料くらいは読んでみようよ、というのが自分が資料を読むようになってからの強い思いだ。テキストの背後にはコンテクストがあるので、それを無視して論じると、むしと間違いすら起こりえるわけだけど、実際の外交の現場で何が行われているかを実態的に知らないと見えてこない世界も確実にあるわけだ。
>りんむー先輩
ここに書いた話は1分くらい先生が話したところに、自分が「過剰反応」及び「拡大解釈」しただけですが、昨日は面白かったです。やっぱり、先生も打たなければ響かないわけですね。
>kamaちゃん
方法論や分析対象は違えど、対話可能性を信じて研究を進めたいものだね。そうそう、研究は面白んだよ。
>syk
日本流のやや偏った歴史学でなければ、外交史は歴史学の一分野にするのもありだとは思うんだよね。ただしアメリカで死滅しかけているとはいえ、外交史は国際関係論を構成する重要な一要素であるべきだと俺は思うよ。学問の流行りは必ず揺り戻しがあるわけだし。合理選択論によって見えてくる世界もあるけど、見えなくなるものも当然たくさんあるわけだからね。ちなみにこの記事は、五分くらいでだーっと書いたかなりの悪文なので、日本語読解力とはあまり関係ないと思います。

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