2007年07月28日

書評にうなる。

本格的に夏休みスタートといった感じで、キャンパスには本当に人が少ない。それでも、ピザーラで後輩に遭遇したり、院棟にはいつもの面子がいたり、変わるような変わらないような…。

驚いたのは図書館が六時で閉まるという事実。春休みもそうだったはずだが、すっかり忘れていた。しかも日曜日に至っては図書館は開いていないし。週末はまた近所の大学図書館に通うというのもいいのかもしれない。

色々な作業をしている息抜きにふと思い出して図書館へ行き、予告されていた時点で気になっていた書評をコピーした。

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以前にも紹介したことがあるこの二冊のPR誌。左は有斐閣のPR誌『書斎の窓』で、右は創文社のPR誌『創文』だ。出版社のPR誌なので、紹介されているのは自社の本であるわけだが、今回はそのどちらにも外交史関係の本が紹介されていた。

『書斎の窓』には、君塚直隆『パクス・ブリタニカのイギリス外交』、服部龍二『幣原喜重郎と二十世紀の日本』という昨年末に相次いで刊行された二冊の外交史研究書をまとめた書評が掲載されていた。時代も扱っている国も異なる二冊であるが、こうやって並べてみることによって一冊の本の意義をより広く考えられるということが分かる。

『創文』は、川嶋周一『独仏関係と戦後ヨーロッパ国際秩序』の特集ということで、研究者二人による書評と著者自身による論考が掲載されていた。著者の論考は別として、研究者二人の書評は比較対照して読むとなかなか面白い。片やヨーロッパ外交史の専門家による書評、片や日本外交史研究者による書評である。当然内容に対するコメントは、ヨーロッパ外交史研究者による書評の方が細かく検討されているわけだ。しかし自分にとって面白かったのは、日本外交史研究者による書評の方だ。これはもちろん自分の専門が日本外交史だからだと思う。しかし、書いている内容は日本外交史研究者に対するものではなく、より大きな意義を持ったことだと思う。

…国際秩序の重層性という指摘を行うのはたやすいことであるが、実際に多次元的な関係性を読みやすく書くことは至難の技である。複数国の外交文書に基づく、マルチ・アーカイヴァルな接近方法を採れば、自動的に実証性の高い研究が生まれるという考えは実は間違っている。役者の数が多いほど、劇作家は主役と脇役を上手に配する構想力を身につけねばならないのである。多次元的な分析の難しさを、ドゴールに焦点をあてることで解決した点は、著者の慧眼であると思う。

こう書いたり考えたりすること自体はそれほど難しくもないし、書いていることはごくごく当たり前のことである。しかし、国際秩序と独仏関係を描いた外交史研究書の書評としてこれが書かれていること、さらに『近代日本の国際秩序論』の著者がこれを書いていることの重みは大きい。さて、自分の研究はどうしたものだろうか。

そう書いてみたものの解決方法はしっかりしている。修士論文は、そんな大きなことをやる必要はないし、一番大事なことは「堅実」にいくということ(これは何人かの先生に言われたことでもある)。まずは、どんな登場人物がいるのか、そしてその登場人物がそれぞれどのように動いていたのかを資料に基づいて明らかにしていくこと、この作業がこれから数ヶ月の課題になるわけだ。

何となくやる気がさらに出てきました。

そしてそのやる気をそぐのが、サッカー日本代表の戦いぶり。アジアカップは初戦以外全て見ているだけに残念だ。ああ口惜しい。

at 23:55│Comments(2)本の話 

この記事へのコメント

1. Posted by 佐野@京都   2007年08月02日 04:09
はじめまして&お久しぶり、佐野です。
先月に紹介していた『近代日本の国際秩序論』
なかなか面白かったっす。
太平洋戦争をまたいで、あんな外交論議があったとは驚きでした。
あと、当時の雰囲気はなかなか掴みづらいですね。
(『思想』の「丸山真男の国際政治思想」で指摘してた、
高坂&永井が登場した文脈すら知らなかったよ、、)
これからも良書の紹介を楽しみにしてまする。
2. Posted by 管理人   2007年08月02日 09:33
はじめまして&お久しぶり、という挨拶は新しいなー。
『近代日本の国際秩序論』は、紹介しておきながら未読です。各章の基になっている論文それぞれは読んでいるから、ついつい先送りになってるよ。今やっている作業が終わったら、真っ先に読んでやろうと思ってる。気が付いているかもしれないけど、この記事で紹介している二つの書評を書いているのは『近代日本の国際秩序論』の著者なんだよ。すごいね、この人は。
当時の雰囲気を知るというのは、なかなかに骨が折れる作業なんだよ。当時の新聞・テレビ・雑誌なんかを一週間くらいかけて壱岐に読んだり見たりすると、何となく雰囲気がつかめてくるわけだけど。
こっちに帰ってくることがあれば、飯でも食おう。

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