大崎に隠れ家発見。暇です。

2005年07月20日

再び大崎。

国際政治経済論?の試験があった。昨日と同じく適当に終わらせる。ゼミの先生の試験なんだが…。試験も残るは月曜2限の政治理論史?のみ。これも当日勉強して終わりにしよう。

そして今日も大崎へ。といっても昨日とは行き先も相手も違う。GATE CITY OHSAKI…穴場です。うるさい学生もいないし、落ち着いた雰囲気、カフェなんかもいくつかある、一応本屋もある、これは使える。大学が閉まっている時期は大崎へ通います

昨日、西洋外交史のレポート、というか書評を書いた。このblogで以前書いたものに加筆訂正したものを今日提出したので、再度アップ。

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君塚直隆『女王陛下のブルーリボン』(NTT出版)
君主制を取る国家が少なくなった現代の世界においても、依然として王室外交は存在する。日本もそれを実践する国の1つであるが、やはり華やかな(そしてスキャンダラスな?)王室のイメージでも、そして世界的な影響力の面でも、本書が扱うイギリス王室には及ばないだろう。本書はイギリス王室外交の中でも、勲章外交、特にガーター勲章(通称:ブルーリボン)を巡る外交に注目して議論を展開している。ガーター勲章はイギリスの数ある勲章の中でも最高位の勲章であり、このブルーリボンの授与を巡って世界の王室が様々な動きを見せた。本書では、ガーター勲章の制定から現代までのガーター勲章を巡る外交を描いている。第1章は、ガーター勲章の成り立ちからヴィクトリア女王以前の勲章外交などを包括的に扱っており、やや内容が詰め込まれ過ぎている感もあるが、ヴィクトリア女王のガーター外交が描かれる第2章からは、バランスよく様々なエピソードが添えられており、吸い込まれるように勲章の世界へ導かれるだろう。また補論部分では、イギリスの貴族制やガーター勲章以外の勲章についても詳細に紹介されている。
本書の最後は非常に印象的であるので、少し長いが引用する。

 二一世紀を迎え、世界には二〇〇近い国家が誕生しているが、そのうち君主制をとる国はわずか二八(ただしエリザベス女王が国家元首を兼ねる英連邦諸国を含めると四三カ国)になってしまった。<中略>イギリスが世界に冠たる大国として認められ始めたここ二〇〇年の歴史のなかで、「ブルーリボン」が果たした役割は何人もの外交官の働きに匹敵していたといっても過言ではなかろう。人間の世界に名誉や序列が存在する限り、勲章はなくならない。その意味でも、近年の外交史のなかで重要な位置を占めてきた「ブルーリボン」に今後とも注目していくことが、二一世紀以降の国際政治や世界秩序を見ていく上で、有益な示唆を与えてくれるように思えてならないのである。

本書は歴史学の成果であり、しかも勲章という「名誉」に注目して外交を描いている。同じ、外交に関わる分野を扱っていても、2つの「ネオ」(ネオリアリズム&ネオリベラリズム)的な思考の影響を強く受けた「合理的な」国際政治学を学んでいる人間にとっては、「力」も「利益」も出てこない本書には違和感があるかもしれない(もっとも、流行りの言葉を使えば本書は「ソフトパワー」を論じているといえるのかもしれないが)。私自身はそのような「合理的な」国際政治学に対して若干の違和感を持っているのだが、それでも国際政治を見る上で、もし「力」や「利益」で説明が付くのであれば、出来る限りそれで説明をする方がよいと考えている。なぜなら「名誉」や「価値」といったものは測ることが難しく、分析としては危うい面があるからだ。もし、「力」や「利益」で多くのことが説明でき、そして解決ができるならばその方が「合理的」であるし有益だと私は考える。しかし、である。以上のように考えながらも私は同時に筆者の「人間の世界に名誉や序列が存在する限り、勲章はなくならない」という一文に強く同意する。人間が「力」や「利益」だけに基づいて行動してきたのであれば、これほどまでに人間は悲惨な歴史を歩まなかったろうし、これほどまでに魅力的な歴史を歩むこともなかっただろう。「力」や「利益」ではなく「名誉」や「権威」の最も象徴的な顕れが勲章であり、その最高位に位置するのがガーター勲章である。勲章外交は、国家間の「名誉」や「権威」を巡る激しい争いである。本書は勲章外交を鮮やかに描き出すことによって人間の本質というものに迫っているといえるだろう。

それにしても、引用部分の「君主制をとる国はわずか二八になってしまった」という嘆きはなかなか面白い。本書は、抑制された筆致で勲章外交を描き出している。何か特定のメッセージを前面に打ち出して読者を納得させる類の本ではない。しかし、最後の最後になって君主制に対する筆者の考え方が「嘆き」の形を取って表れてしまったのだろう。我々にとって、君主制、共和制、というこの2つの統治体制のどちらが「いい」のだろうか。それは、そもそも政治とは誰のためのものなのか、という問いそのものかもしれない。本書は、「勲章外交」を描くことによって読者にここまで考えさせてくれる。

at 21:15│Comments(2) 本の話 

この記事へのコメント

1. Posted by shingo   2005年07月20日 23:16
>月曜2限の政治理論史?
俺もテスト二つのうち一つはこれ
一回しか出てないから、今日ミーシャにノート借りた
隠れ家か・・いいな。
といっても学校閉鎖期間は山中湖で後輩苛める期間とうまく被ってる
・・夏休みなんかまとまったもの書いてブログに載せてみるのもいいな。
2. Posted by とりとり   2005年07月20日 23:52
>学校閉鎖期間は山中湖で後輩苛める期間とうまく被ってる
頑張って苛めて来てください。
>・・夏休みなんかまとまったもの書いてブログに載せてみるのもいいな
是非やってくれ!楽しみにしてます。ちなみに…上の書評は1800字くらいなんだけど、小論文としては2000字前後が適量だと思う。長すぎず短すぎず。意外と書く側の力量が試されるんじゃないかと。ま、この書評は前のに加筆訂正したからまたちょっと違うんだけどね。

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